Vol6美味しいステーキの夜に、伯母が漏らした小さな告白

久しぶりの外食は、少し奮発して「あか牛」を

 伯母との旅行の後も、定期的な訪問は続いていました。そんなある日の訪問時、久しぶりに外食をすることになりました。

 伯母は好き嫌いがなく、肉でも魚でも何でもよく食べてくれます。「今日はお肉にしようか!」という私の掛け声に、伯母も嬉しそうに頷いてくれました。

 いろいろと探した結果、伯母の家の比較的近くに「あか牛のステーキハウス」があるとの情報を入手。混雑を避けるため、19時頃にお店へ向かいました。

 「回転寿司のスシローにはたまに行くけど、本格的なステーキは初めてかも」と、期待と不安を抱きながら店内へ。

 

 

## ヒレか、サービスか?テーブルの上の小さな攻防

 

 さて、何を注文しようか――。メニューを眺めると、なかなかに良いお値段です。そこで、伯母には奮発して「ヒレステーキ」を、私と妻は「サービスステーキ」を注文することにしました。せこい話ですが、私たち2人分の料金を合わせても、伯母のヒレステーキの方が高いほど。でも、「まぁいいか、もうすぐボーナスだし!」と自分に言い聞かせました。

 いざ料理が運ばれてくると、思わずテーブルの上を見渡してしまいました。

 「ヒレステーキはなんと立派なんだ。それに引き換え、私たちのサービスステーキの貧弱なこと……」

 心の中でそう呟きながら、同時に「もし伯母が残したら、その分をもらおう」と淡い期待を抱きつつ、「いただきます」をしました。

 

 

## 完食の喜びと、帰り道の違和感

 サービスステーキも十分美味しかったのですが、「あっち(ヒレ)はもっと美味いんだろうな……」と気になってしまい、会話もどこか上の空です。

 時間が経ち、伯母の様子を伺うと「よし、しめしめ!これは残りそうだぞ」という雰囲気に。早く食べたい衝動に駆られます。

 ところが、それまでゆっくり食べていた伯母のペースが、ここへ来て急に上がっていくではありませんか。

 伯母が形ばかりに「食べんね(熊本弁)」と勧めてくれましたが、私は「いや、お腹いっぱいになったよ!食べなっせ」と、ぐっと我慢。

 そうしているうちに、伯母は見事にペロリ。お皿の上は綺麗さっぱりになっていました。

 食後のコーヒーとデザートまでしっかりと平らげる姿に、「食欲旺盛で何よりだな」と満足し、私たちは伯母の家へと戻りました。

 

 

## 暗闇が教えてくれた、伯母の「SOS」

 当時、伯母の家には犬がいました。私の母から伯母へと引き取ってもらった、マルチーズの「ペルちゃん(15歳・オス)」です。

 「さぞやお肉の匂いを気にするだろうな」と思いながら玄関へと歩き出したとき、伯母の歩くスピードが急に遅くなっていることに気づきました。

「あれ、どうしたのかな?」

 不審に思いつつ、伯母の後ろに回り込んで、腰と腕にそっと手を添えながら家の中へ入りました。家に入ると、案の定ペルちゃんがクンクンと匂いを嗅ぎ回っています。

 みんなで席に座ってお茶を淹れ、「さっきのステーキ、美味しかったね」としばらく話した後、先ほど急に歩くスピードが遅くなった理由を尋ねてみました。

 すると、伯母から思いがけない言葉が返ってきたのです。

「最近、目が見えんとよ。暗いといっちょん見えん(全然見えない)」

 眼科にはもうしばらく行っていないとのこと。

 「今度は福岡に伯母さんを連れて行こう。福岡の眼科の先生にしっかり診てもらおうね」と言うと、伯母は「お願いします」と二つ返事でした。

次回は、眼科を受診したときのお話です。

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