Vol5神様について(その3)イザナギ・イザナミ

仲良く国産みと神産み、そして悲しい別れ

 ここから、それまでの抽象的な神々とは違い、具体的でダイナミックなストーリーが動き出します。

1. 天の神々からの命令と「天の沼矛」

 イザナギとイザナミは、先輩である天の神々(高天原の神々)から「この漂っている頼りない大地を、しっかりと整えて作り固めなさい」と命じられます。
 その際、宝石で飾られた不思議な矛(ほこ)である「天の沼矛(あめのぬぼこ)」を授かりました。

2. 最初の島「オノゴロ島」の誕生

 二柱の神は、天と地を結ぶ虹の架け橋のような場所「天の浮橋(あめのうきはし)」に立ち、眼下に広がるドロドロの海に天の沼矛を突き下ろしました。
 そして「コオロコオロ」と音を立てて海水をかき回し、矛を引き上げます。
その時、矛の先からポタポタと滴り落ちた塩が積もり、固まって一つの島ができました。
 これが、日本列島で最初にできた島「オノゴロ島(自ずから凝り固まった島)」です。

3. 結婚の儀式と「最初の失敗」

 二柱はオノゴロ島に降り立ち、立派な宮殿と、天を突くような太い柱「天の御柱(あめのみはしら)」を建てました。そして、結婚の儀式を行います。

儀式の内容:イザナギは左から、イザナミは右から、巨大な柱をぐるりと回って出会います。

失敗の原因:出会ったとき、女神であるイザナミが先に「まあ、なんて素敵な男神でしょう!」と声をかけました。その後、イザナギが「なんて素敵な女神だろう」と応じ、二人は結ばれます。

 しかし、こうして生まれた子供は、骨のない蛭(ひる)のような子(水蛭子:ヒルコ)や、頼りない泡の島(淡島:アワシマ)であり、まともな子供(島)になりませんでした。二人は悲しみ、これらの子を葦の船に乗せて海へ流してしまいます。

4. 神々のアドバイスと「やり直し」

 困り果てた二柱は、高天原に戻って天の神々に理由を占ってもらいました。
 神々の答えは「女性から先に声をかけたのが良くなかった。次からは男性から先に声をかけなさい」というものでした。
 二柱は再びオノゴロ島に戻り、もう一度柱を回る儀式をやり直します。今度は出会ったときに、男神であるイザナギから先に「まあ、なんて素敵な女神だろう」と声をかけ、イザナミがそれに答えました。

5. 日本列島の誕生(大八島国)

 正しい手順でやり直した結果、今度は次々と元気な島たちが生まれました。
 最初に生まれた主要な8つの大きな島を総称して「大八島国(おおやしまぐに)」と呼び、これが現在の日本列島の原型となります。
生まれた順番は以下の通りです。
    1. 淡道之穂之狭別島(あわじのほのさわけのしま) = 淡路島
    2. 伊予之二名島(いよのふたなのしま) = 四国
    3. 隠岐之 Mitsugo 島(おきのみつごのしま) = 隠岐諸島
    4. 筑紫島(つくしのしま) = 九州
    5. 伊岐島(いきのしま) = 壱岐島
    6. 津島(つしま) = 対馬
    7. 佐渡島(さどのしま) = 佐渡島
    8. 大倭豊秋津島(おおやまととよあきつしま) = 本州
 この8つの大島を生んだ後、さらに周囲の小さな島々(小豆島や大島など)を6つ生み落とし、日本の国土が完成しました。
 国土をすべて生み終えたイザナギとイザナミは、次にこの土地を豊かにするために、石・海・川・風・木など、ありとあらゆる「自然の神々(神生み)」を生み出すステップへと進んでいきます。

1. 森羅万象の神々の誕生(神生み)

 二柱は、人間が島で暮らせるように、自然環境を整える神々を次々と生み落としていきました。
  • 海の神:大綿津見神(オオワタツミノカミ)
  • 風の神:志那都比古神(シナツヒコノカミ)… 吹き抜ける風
  • 木の神:久久能智神(ククノチノカミ)… 樹木の生命力
  • 山の神:大山津見神(オオヤマツミノカミ)… すべての山の支配者
  • 原野の神:鹿屋野比売神(カヤノ1. 森羅万象の神々の誕生(神生み)
  • 二柱は、人間が島で暮らせるように、自然環境を整える神々を次々と生み落としていきました。海の神:大綿津見神(オオワタツミノカミ)風の神:志那都比古神(シナツヒコノカミ)… 吹き抜ける風木の神:久久能智神(ククノチノカミ)… 樹木の生命力山の神:大山津見神(オオヤマツミノカミ)… すべての山の支配者原野の神:鹿屋野比売神(カヤノヒメノカミ)… 草原や萱(かや)の神このように、家を建てる材料や食べ物を得るための自然環境が、神々として次々に誕生しました。

 

2. イザナミの死と、最後の子供

 

 順調に見えた神生みでしたが、最後に恐ろしい悲劇が起こります。イザナミが火の神様である「火之夜藝速男神(ヒノヤギハヤヲノカミ / 別名:カグツチ)」を生んだとき、その激しい炎で御性(陰部)に大火傷を負ってしまったのです。

 イザナミは苦しみ、病床に伏せります。その苦しむ最中の嘔吐物や糞尿からも、土の神や水の神など、多くの神々が生まれました。

 しかし、懸命の看病も虚しく、イザナミはついに亡くなり、死者の世界である「黄泉の国(よみのくに)」へと旅立ってしまいました。

 

3. イザナギの怒りと悲しみ

 

 最愛の妻を失ったイザナギは、遺体に抱きついて大泣きしました。このとき流した涙からすらも、泣沢女神(ナキサワメノカミ)という神様が生まれています。悲しみがやがて激しい怒りへと変わったイザナギは、妻の命を奪う原因となった我が子・火の神カグツチを許すことができず、腰に帯びていた十拳剣(とつかのつるぎ)を抜いて、カグツチの首を切り落としてしまいました。

 このとき、飛び散ったカグツチの血や、残された体からも、刀剣の神や雷の神、山の神々など、さらに多くの神々が誕生することになります。

 

4. 黄泉の国への旅立ち

 

 どうしても妻を諦めきれないイザナギは、彼女を連れ戻すために、危険を顧みず暗闇に包まれた死者の国「黄泉の国」へと向かう決意を固めます。

現代社会に置き換えると

 イザナギの「子殺し」は、一見すると神話特有の凄惨な事件ですが、その根底にあるのは

 **「理不尽な現実に直面した人間の、制御できない感情の暴走」**です。

​ 現代を生きる私たちにとっても、「悲しみや怒りに狂ったとき、自分より弱い立場の人を傷つけていないか」「何かの身代わりに誰かを責めていないか」を強く考えさせられますね。

Leave a Comment