vol8【実録】一人暮らしの伯母が自宅で転倒。甥の私が「住宅改修」と「リハビリ」を決意した日
ご近所さんからの突然の呼び止め。「〇〇さんが車庫で転んで……」
ある土曜日のこと、伯母を定期受診(眼科)に連れて行くため、私は伯母の家へと車を走らせていました。到着すると、なぜかご近所の奥様方が私の車に近づいてこられます。
車を降り、不思議に思いながら挨拶を済ませると、奥様方から衝撃の事実を告げられました。
「〇〇さんが車庫で転んでね、顔を打って青あざだらけよ」
驚いて「今、伯母はどこにいるんですか?」と聞くと、「家におんなはる(居る)。病院に連れて行こうかって誘ったんだけど『大丈夫、行かんでよか』って言いなはってね……」とのこと。
奥様方は、私が迎えに来る時間をわざわざ待って、この情報を伝えるために気にかけてくださっていたのです。その温かい配慮に、心から感謝しながら丁寧に御礼を伝え、急いで家の中へと入りました。
玄関で絶句。顔面積の50%に及ぶ痛々しい打撲
玄関に迎えに出てくれた伯母の顔を見て、私は思わず息を呑みました。
額、目の周り、頬――顔の面積の半分ほどが、車庫のコンクリートに激しくぶつかった跡で紫色に腫れ上がっていたのです。幸いにも鼻に外傷はなく、かろうじて手を突いて顔をかばったようでした。
私は落ち着いて、伯母に当時の状況を一つずつ確認していきました。
「今日は何をするために外に出たの?」
「……水撒きかね」
「水撒きのあと、家に入ろうとしたの?」
「入ろうとしたけど、水道の蛇口を開けっ放しにしてたけん、取り戻ろうとしたら、つこけた(転んだ)」
どうやら、このような状況だったようです。さらに体調の確認を続けます。
「痛みはあるよね?」
「痛かぁ……」
「病院に行こうか」
「行かんでよか」
「どれくらい前に転んだ?」
「昼前だろ(私は分からん)」
「じゃあ、3時間以上は経ってるね。吐き気はない?」
「吐き気はないよ」
「めまいはする?」
「めまいはせん」
「目はちゃんと見える?」
「見えるよ」
ひとまず意識ははっきりしていましたが、頭を打っているため、後から頭痛や吐き気などの症状が出る怖さがあります。
眼科の受診は月曜日。私は予定を変更し、この日は伯母の家に泊まって様子を見ることに決めました。日曜日を挟んで、月曜日に福岡へ帰れば問題ありません。
緊迫した話を一度切り上げ、「今日は泊まるけん、晩ご飯はお寿司でも食べようか!」と言い添えると、伯母はとても嬉しそうな表情を浮かべました。
現場検証で見えてきた「2つの原因」
伯母が部屋の片付けなどでコソコソと動いている隙に、私は「転倒の現場検証」を行うことにしました。
伯母の行動ルートを実際にたどってみると、「なるほど、これが原因か」と思えるポイントが浮かび上がってきたのです。
- 原因1:筋力の衰えによるバランスの欠如
- 原因2:バランスを崩した際、とっさに掴める場所(手すりなど)がなかった
原因がわかれば、解決策も見えてきます。
まず「筋力の衰え」に関しては、機能訓練(リハビリ)で強化できる可能性があります。
実は3年ほど前、地域包括支援センターで「要支援1」の認定を受けていた伯母。当時、ケアマネジャーさんを含めて介護予防サービスの利用を勧めたのですが、本人は「全くその気なし」で断固拒否していたのです。しかし、今回の怪我は大きな転機。頑固な伯母を説得する「チャンス」かもしれないと考えました。
次に、2つ目の「掴まる場所」です。
駐車場から玄関までの動線を見渡してみると、確かに手すりの類が一切ありません。これまで「ここで転倒するかもしれない」という視点で実家を見たことがなかったため、完全に盲点でした。
さらに、玄関の上がり框(かまち)も段差が高い割に手すりがありません。「これは手すりを作らなければ!」と決意し、すぐに地域包括支援センターへ電話を入れました。
あいにくその日はケアマネジャーさんがお休みだったため、電話口の担当者へ用件を伝え、折り返しをもらうために私の携帯番号を残しました。
転倒劇からの、次なる一歩
その日の夜は、伯母と回転寿司へ。
美味しいお寿司でお腹を満たしながら、これからの「住宅改修(手すりの設置)」と「リハビリ」について、まずは最初の頭出し(提案)をしてみました。
ひとまず伯母の体調に異変がないことを確認し、翌日の午前中、私は伯母を連れて福岡へと戻りました。
一時はどうなることかと思った突然の転倒トラブル。しかしこれが、伯母のこれからの安全な暮らしを見直すキッカケとなったのです。